夕焼け色に染まる頃


それは何故か。
よくよく考えて見れば簡単だ。

私は、私がもといた場所「未来」が好きじゃない。

むしろ嫌いなんだろうか。

戻ったところで待ってくれている人なんていない、帰ったところで迎えてくれる人なんていないんだから。

ひとつ、大きく深呼吸をした。

ほら、ここなら息をつまらせないで吸える。

景色がとても、綺麗なのに。


「―――……"こんな世界"、だからか?」


「……え……?」


ふとこぼした高杉さんの言葉。

それは私の意図を汲んでいて、まさにその言葉通りで。

驚いた私は、目を見開いた。


「お前と初めて会った時そう言っていた。無意識だろうな、でも確かにそう言った」


そして一瞬、悲しげな顔をして。


「――……未来より、過去であるこっちのがいい世界か?未来とは、帰りたくなくなるほど居心地の悪ぃ世界なのか」


「……高杉、さん」


「嫌がるお前に帰れ、なんて言わねえよ。俺はわからんからなぁ、だが……」


なにがわからないんだろう。

今の私には、高杉さんの悲しげな表情の意味を図りかねていてわからない。


「俺たちの作ろうとする未来は、そんなもんなのか……」


「……っ」


息は詰まらなかった。

ただ詰まったのは、胸?心臓?

きゅうと閉まって、こっちまで切なくなる。


< 61 / 189 >

この作品をシェア

pagetop