夕焼け色に染まる頃
「すまない」
近くにある高杉さんの胸はとても暖かくて。
秋半ばの気温に冷えた私の肩はたちまち暖まっていく。
「……すまなかった……」
そして、少し震えた高杉さんの声がとても近くに感じた。
心臓のゆっくりな音が耳元でトクン、トクンと鳴っていて、すこし低音な高杉さんの声が心地よくて。
「辛い事を離させて、すまなかった。そんなつもりは、なかったんだ」
あぁ、それ、私の台詞なのに。
高杉さんにあんな顔をさせるつもり、なかったのに、って。
「……わかった。お前の、事情はまだまだ曖昧ではあるがわかったさ」
トン、トンと優しく背中を叩いてくれる。
流れる涙が、それに連動してポタリポタリと高杉さんの着物に染みを作るのがわかる。
「お前の身柄は俺が預かろう」
トン。ひとつ、背中を叩く。
「そして、約束してやろう。――……いや、カケだ」
……賭け?
つい、耳を澄まして高杉さんの言葉を聞こうとした。
どういう、ことだろう?
「お前が、この世界を『綺麗だ』と言えるように。……俺は、"頑張ってやるからな"」
高杉さんは、高らかに笑った。
――……そして私は、知ることになる。
高杉晋作という男の、破天荒な生き様を。