夕焼け色に染まる頃
01
あれから数週間の時が過ぎた。
一向に帰れる目処なんてなくて、むしろ高杉さんや桂さん、石川さんの態度を見ていると
「帰んなくていいぜ!」
って遠回しに言われているみたいで面白い。
とは言え、この功山寺でこれから何かが起きるらしく、三人とも騒がしいったらありゃしない。
……間違えた、"忙しそうだ"ったら、ありゃしない。
そんな中、戦えもしない私がどんな役割でここにおいて貰っているのかと言えば……。
「おぉ、旨い!すげぇな、小五郎みたいに味噌汁が甘くならないぞ!」
「ごほん!……晋作?」
「こらこら高杉さん、そんな率直な感想を言ってはいけない。もっとも、俺もまっったくもって同感だけどね」
いつもと変わらぬ朝御飯の風景。
ただひとつ、数週間前から変わったことと言えば私がその朝御飯を作っている、と言うことだ。
「朔にぴったりじゃねぇか!むしろ朔にしかできねぇ、よろしく頼んだぜ!」
なんて高杉さんは言ってくれたけども。
運動神経皆無、加えてこの時代の知識までも皆無に等しい私にはこの役割しかなかったんだと思う。
他にも、毎日忙しそうな高杉さんのちょっとしたお手伝い(雑用とも言う)をしたりと、案外大変な毎日。