夕焼け色に染まる頃


強い眼差しは、混乱して錯乱する私の瞳を捉えて離さず。

腕も、まるで私を離すまいとしているかのようにぎゅうとまわされていた。

……あ、急に怖くなってきた。
質問にどう、答えればいいんだろう?

だって、私が今出した答えなんて「幕末にタイムスリップしちゃったのかも!?」なんて普通だったらあり得ないような事。

けれども、今のこの状況から入ってきた情報を頼りに考えると、これしか思い浮かばない訳で。


「……高杉晋作」


「なんだ、いきなり呼び捨てか女」


「長州藩。幕府による長州征伐が発令されたせいで今まで福岡に潜伏、……今は下関に向かっている最中ですか」


「…な、……!!」

そう、震える声で言えば高杉さんは息を飲んだようだった。

ぐっと腕に力が込められ、私はつい呻くように小さく声を漏らしてしまう。

高杉さんの顔が怖くて見れない。

伏し目がちに下を向いて、高杉さんの視線から逃れようとできる範囲で体を捻って。

……自分から言っといてなんなんだろう、でも。
今の高杉さんの反応で、確かに私はタイムスリップをしてしまったのだとわかった。


平成から、この動乱の幕末まで。


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