夕焼け色に染まる頃
そのせいで二人の緊張が移らないように、私は静かに深呼吸をひとつした。
「お前は初めて会ったとき、俺がここ下関――……もとい功山寺に向かっているのを当てたな?」
あぁ、確かに私は、私の知っている歴史の知識を上手くあそこで使った。
「はい、当てました」
「じゃあ、何故俺らがここに集まっているのかわかるか」
「……集まる……?」
「あぁ、そうだ。集まる、だ」
意味深な高杉さんの言葉に、私の脳みそは回り出した。
そうだ、私は未来からきている。
そのことを、こういうふうに今から起きる事を歴史的に考えなくてはならないときに実感する。
きっと、それはこれからも感じることなんだろう。
「確か、高杉さんがこの下関に戻ってきたのは――……、」
「八月十八日の政変後、晋作が長州藩を脱藩した元凶である正義派家老が処刑されたからだね」
頭の中で整理しきれなかった情報。
つい言葉を濁せば、桂さんがうまく繋いでくれる。
それに感謝の意を込めてひとつ頷いた。
「はい。そして高杉さん、今貴方が考えていることとは――……あ、いえ、と言うよりは、私だったらこうするなーって事のほうが強いんですけれども」