夕焼け色に染まる頃
「だが、ただの町娘に等しいお前を戦いにつれていく訳にはあるまい?いや、来たくもあるまいよ。だから朔、お前――……」
そこで、ずっと真っ直ぐ私に注がれていた高杉さんの視線がそれた。
女装して……いいや、これは変装だったのか、と今さら気付く。
桂さんに次の言葉を促すように。
「僕についてくるといい。僕はひとつ用事があって戦いには参加しないで地方に行くんだ。確かに、道中は危険もあるだろうが、ね」
「少なくとも、俺達挙兵組よりは安全って訳さ」
桂さんと石川さんが目をあわせた。
多分石川さんは私が桂さんについていくべきだと思っているんだと思う。
ふ、と短く息を吐きながら肩をすくめた。
微かに、自分の肩が震えるのが分かる。
「だがなぁ、朔。別に――……良いんだぜ?」
「……え」
「もし、お前が、だ。どうしても俺様についてきたい、役にたちたい、というのであれば」
「高杉さん!」
「晋作!」
高杉さんが全ての言葉をいう前に、石川さんと桂さんが同時に声を張り上げた。
つい、私の肩が跳ねる。
二人を見れば無言だけれども高杉さんに「やめろ」と目で訴えているようで、私は息を止める。