夕焼け色に染まる頃
……なるほど。
それはきっと、高杉さんが言ったんだろうな。
じとーと相手を見れば、それよりも無言だったのを肯定と取ったらしい。
「はっはっはっ」
高らかに笑って、伊藤さんはポンポンと私の頭を撫でた。
「やはり君は危なっかしい。しかし、そのくせ高杉さんについていこうとするのだ、全く、馬鹿なのか天然なのか、はたまた両方なのか」
「な……っ!」
「ふむ、両方だ」
失礼な事を言われている気がする、むしろ失礼な事しか言われてない気がします!
やんわりと解放されてもなお、物言いたげにじぃっと凝視する私に気づけば、伊藤さんは意味あり気ににやりと笑った。
「何故君は昨日、安全な桂君と行く方を選ばなかったんだね、私はまずそれが聞きたい」
後ろで、ざわざわがさり、と木の葉が揺れる音がした。
続いてさぁっと頬を吹き抜ける風。
何故、なんて聞かれたって、……そんなの聞かれても困る。
「ついていきたかったからです、高杉さんに」
「ほぅ。……何故」
「……わかりません」
そう答えて、私は口をつぐんだ。
だって、わからないんだもの。
確かに、頭の中では桂さんに着いていく方が安全だし、高杉さんの邪魔にもならないって事は良くわかる。