夕焼け色に染まる頃
むしろ、わかりすぎるくらいだ。
だって、私は私の体力の無さを自覚している。
「恩返しとか、そんなカッコいい理由じゃありません。見届けたいとか、そういうものでもなくて、ただ――……」
ほら、あと一歩。
あと少しまとめれば私の気持ちは言葉に出来そうなのに、出来ない。
「近くにいたい?……うぅん、ちょっと違うなぁ……」
いつの間にか自分の世界に入って考え込む私。
そんな私を、伊藤さんはただ黙って見守ってくれていた。
「近くに………――――………、あ、」
そして、私の頭が行き着いた先は数週間前、ここに来たばかりの出来事。
タイムスリップした次の日、高杉さんに連れてって貰った丘。
そこから見た景色。
高杉さんと見た夕日はとてもとても、綺麗だった。
そして、高杉さんとした約束も勿論、覚えている。
うぅん、高杉さんはあのとき「賭けだ」とか言っていたけれどもね。
「わかりました、伊藤さん。私」
「ふむ」
相槌を打ってくれる伊藤さんの声がやさしい。
「高杉さんと同じ景色を、見ていたいです」
「……それは、綺麗な景色じゃあなくても、って理解してのことなんだね?」
「はい」
素早く私に質問した伊藤さんは、私の答えを聞いて無言で頷いた。