夕焼け色に染まる頃
「え?」
つい口から漏れた言葉は、高杉さんの言葉がわからなかったから聞き返した、というごく自然な形で出てきた。
「だからよ、んなに背中見られてっと俺の背中に穴が空いちまわぁ」
……何故こっちを見てないのにわかったんだろう。
そんな事を思ってパチパチと目を瞬かせればピタリと高杉さんの足が止まった。
ドンッと、違うことに気をとられていた私はその背中に鼻をぶつける事になる。
「いっ……!」
そんな私を振り替えって、高杉さんはにたりと意地悪く笑んだ。
…………確信犯だ、ぜっったい確信犯だ……!
「お、良い顔すんじゃねぇか」
思わず睨んだを見て満更でもなさそうにへらりと笑えば、ぐいっと私を引き寄せる。
その力に抗う事なんてできるはずもなく、私はよたっと高杉さんの横に並んだ。
「……!ここは……?」
よたついてやっとこさ顔を上げた、その前にはドーンと構える……い、家?
いや、大きすぎて現代じゃありえない。
でもここは幕末なんだと割り切れば、確かに家だと思えなくもない。
と、言うのも、すっかり暗くなりつつある中で門の両脇には火が灯り、綺麗なオレンジ色になっていたから。