夕焼け色に染まる頃
「い……、いつから……」
「ん?なんだ聞こえねぇぞ」
驚きすぎて声が上手くでてこない。
次こそは、と大きく息を吸って。
「い、つ、か、ら、!いたんですか!まさか、聞いてたりしてないでしょうね……!」
だってたしか、かなり恥ずかしい事を言っていた気がする。
うぐぐ、伊藤さんだからって油断した!
いつもはあんな、ストレートに言葉を発してしまうなんて私にはあまりないこと。
なのに伊藤さんときたら、ゆらりゆぅらりと私を揺さぶって本心をほろりと出さしてしまう。
「はっはっはっ。『ついていきたいんです』辺りから丸聞こえだ。いや、はは。良いことを聞かせて貰った、なぁ朔」
「な、」
「いやはや。高杉君は役得ですなぁ、聞いていて嫉妬してしまう」
「だろ?」
「ふむ、あとで石川君にも伝えておきましょうかな。彼はさぞかし悔しがることだろう」
「くはっ、確かになぁ」
変に盛り上がる二人の会話について行けなくて、私はただじとぉ、と高杉さんを見た。
けれども高杉さんは私に一度も視線をくれない。
それに加えて、にゅっとこちらに手が伸びてきたかと思えば、
「ふわぁっ!?」
ガシ、と良い音がして何故か私の頭は捕らえられた。