夕焼け色に染まる頃
「勝手にいなくなりやがって、焦ったじゃねぇか。しかも知らぬ間に伊藤と逢い引きたぁ良い度胸してやがる」
「……え」
勿論、私の頭を押さえる高杉さんの手には力なんて込もっていないけれども。
何故か私の顔面は熱くなってぐわんぐわんとするのがわかった。
「ほぉ。高杉君、それじゃまるで嫉妬しているようだ」
「ふふん、俺が、かい?」
「いやはや、私もまだまだ捨てたもんじゃない。高杉君に嫉妬して貰えるとはね――……さて、私はそろそろ失礼しようか。仲のよろしい二人の邪魔をするなんて無粋な真似はしたくないんでね」
そう言って、伊藤さんは爽快に短く笑った。
私は、高杉さんに目元を押さえられちゃっていて前が見えない。
けれども、伊藤さんの気配が遠ざかって行くことくらいは感じられる。
焦って、私は声を張り上げた。
「い、伊藤さん!……えーと、えーと……ありがとうございました!」