きゃらめる味の幽霊
謎のお弁当
無事に大学の入学式も終わり、かれこれ1ヶ月程が経過した。
新しく友達もできたし、まぁ彼女はまだ出来てないけど……結構大学生活は順調だ。
部屋は、家鳴りや、何故かシャワーが出っぱなしの時が時々あるだけで、特に幽霊騒動はまだ起こっていない。
だが、1つだけ。
「お前、またそんなの持って来たのかよ」
学食の向かいの席に座った友人、秋山幸太が心底気持ち悪そうに俺がリュックから取り出した弁当を見つめた。
「本当に何が入ってんだかわかんねぇんだぞ!!病気になる前に捨てろって」
そう、このお弁当。これは俺が作ったものではなく、
―――火曜日と金曜日の朝、起きるとテーブルの上に置いてある物なのだ。
「いや、大丈夫だって。滅茶苦茶うめぇから。」
確かに、一番初めに見つけた時は相当警戒したし、自分が夢遊病で知らぬ間に作っているのかとも思った。
だが、俺は料理が全くできないし、家中を確かめてから向かいのコンビニで一晩中見張っていたが、不審者らしき人間は一切来ず、電気だって一回も付いた形跡がないのに……お弁当はいつものように用意してあり、キッチンにあった汚れた皿などが全て洗われていた。
能天気な俺は、「これは頑張ってる俺に神様がご褒美をくれたんだ!」という極めておめでたい考えにたどり着き、それからはこうして食べ続けているし、むしろ火曜日と金曜日が楽しみになった。
もごもご食べ始めた俺に秋山は呆れた顔をしたが、別に気にならない。
――それ位、美味しいお弁当だったし。