きゃらめる味の幽霊
「どう…?信じてもらえたかな…」
今、目の前で起こった出来事を理解できずに固まってしまった俺の前に来て、自称幽霊が相変わらずうつむき加減で話しかけた。
「お、おう……」
辛うじてそう答えた瞬間、レジにいた店員と客がチラリとこちらを見た。あ、やばい……端から見たら俺の行動は不審すぎる。
自称幽霊に目配せをして、そのままコンビニを出た。
「えへ……私、湊くんの目に映ってるんだよね…?」
アパートの階段の前で、自称幽霊(まあ、幽霊だと信じざるを得ないんだろうが……)は、顔をほんのり染めて俺に問いかけた。
そんな"幽霊"らしくない態度。俺のシャツを控えめにつまんでいる幽霊に、俺は惚れそうになっていた。
「うん、本当に幽霊だったんだな……でも……、怖くないもんなんだな、」
自然と意識してしまっている自分に気が付いて、戸惑いながら……なんとか言葉を繋いだ。
「……本当に?怖くないなら、よかったぁ……」
ほっと安心したように微笑む幽霊。まだ彼女の頬は赤いままだ。