きゃらめる味の幽霊
無意識に手が伸びて、指先で彼女の頬に触れる。
「……ひゃっ!……なんですか?」
「これから、二人暮しだな」
びく、と反応して、さらに頬を赤くした彼女にくすりと笑みをこぼす。
……彼女の頬は、温かかった。
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「えっと、私の名前は松浦満月(マツウラ ミツキ)です。……この部屋で死んじゃって、えへ」
部屋に戻り、改めて彼女に自己紹介をしてもらい、大体予想はついた。……不動産のオバチャンが言っていた自殺した人間とは、この子の事だと。
まぁ、それは置いといて。
いや、置いとける内容じゃないのは自分でも分かっているのだが……
さっき、幽霊、もとい松浦さんに少し惚れそうになっている俺には、さらに重大な問題があった。
それは、
「あ、あの、あのさ……」
「ん、なに?」
「あの、そのパジャマ以外に……服って無いのか?」
そう。
松浦さんは今、薄いTシャツにタオル地のショートパンツを履いており、その……白くて細い足が惜し気もなく晒されている状態なのだ。
受験とかもあり、最近(およそ1年)彼女無しの俺にとって、その光景が常に部屋の中にあるという状況は刺激が多すぎるというか……。ああ、俺は変態か。
ぺたんと座っていた松浦さんは、暫く首を傾けてぼんやりしてから「ぼんっ」と音がするくらい突然顔を赤くした。
「あの、これしか持ってないや」
太ももを隠すようにTシャツの裾を引っ張って、彼女は恥ずかしそうに言った。……可愛い。
「そ、そっか!!じゃあこれ着て、まだまだ寒いからな!」
照れを慌てて隠し、俺は早口でまくし立てた後に自分のジャージを渡した。