あぶのま!【SS】
「なんでそれ、そんなに何回も観てんの? 展開知ってたらつまんなくないの」
「つまんなくないの。」
酷いやつ、てのは、まぁ、うん。
例えばだ。
わりと嫌いじゃない、いや、好きな食べ物が目の前に置かれてるとしよう。
いつでも食べられる状態にあるそれは、特に誰のものと決まってはいない。
周りには誰もいない、食べても誰に咎められるわけでもない、そんな状況で、いつまでも我慢できる人間が一体どれだけいるだろうか。
ちょっと直接的すぎる比喩かもしれないが、つまりはそういうわけだ。
しかし俺が目の前の好物(この言い方なんか下品だな。やっぱりそのまま言うことにする)を我慢せざるを得ない理由は、彼女にあった。
俺が異性として意識されていないだけではない。