あぶのま!【SS】



俺がもし馬鹿みたいに一途で、彼女に狂気的な愛情を抱いていて、頭がおかしい人だったら、彼女の恋愛対象に仲間入りする為に迷い無く死を選んだだろう。
でも俺は一途だけど馬鹿みたいにではなくて、カヨのことは大好きだけど別に狂うほどではなくて、頭は良くないけどおかしくなったりもしていないので、エンドロールの黒を安心して眺めながら言うのが精一杯だった。

「ね、カヨ、じゃあさ」
「だから、なに、真佐」
「俺のこと、死体だと思ってよ」
「んん……無理があるんじゃない?」
「そうかな、だいじょぶじゃない? 暖かくて、カヨを好きで、抱き締めたりキスしたりもする死体だと思えば」
「変わった死体ねぇ」

俺はとりあえず、首に回した腕を振り払わないのは嫌じゃないからだとか、都合のいい考えの死体になることにした。




END

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