生き残れ!主従ゲーム
暫く驚いたまま目を瞬かせていたコレーだが、ハッとしたように首を振るとアテナの肩をぽんぽんと叩き、名前を呼ぶ。
気づいたアテナが近い位置にあるコレーの顔を不思議そうに見つめていた。

「あの、わたしなら大丈夫ですから…」
「このくらい気にしなくて良いと思うよ」
「…で、でも重いです…」
「もっと重い子供だって抱っこしろ、ってせがんでくるから。コレーくらいなら軽い軽い」
「うう…」

小さく笑いながらそう言われてしまうと言い返せない、大人しく従うコレーは先程に比べて怖さが紛れたような気がして少しだけ安心していた。
しかし、アテナは大丈夫といったものの子供を抱えながら視界の悪い林を進むのは負担が大きいのではないかとコレーは考えていた。助けて貰ってばかりだと肩を落としたコレーは俯いていた、そんなコレーに気付きアテナは苦笑混じりに軽く頭を撫でる。

「気にしないで良い、コレーが疲れる方が心配だし…私がそうしたいだけだから。くだらない連中が多い中にコレーを置いていきたくないだけなんだ」

だから進むことだけ考えよう、とアテナは前を見て言った。意思の強い人だ、とコレーは思いながら軽く目を伏せた。
ふ、とコレーの頭を過ったのは先ほどのアテナの言葉だった。暫く考えたが、思い切って訊ねてみることにした。

「……アテナさん、さっき子供が…ってお話しましたよね?」
「ん? ああ、そうだな…気になるか?」
「ちょっとだけ、妹さんや弟さんがいるのかなって…」

一瞬フリーズしてしまったかのように立ち止まったアテナだったが、すぐに笑いながら首を振った。その返答に、どういうことだろうかと頭に疑問符を浮かべたコレーはアテナに続けて聞いてみる。

「ええと……親戚の子供とか」
「いや。残念ながら私にそんなに親戚はいないし、年上ばかりなんだ」
「じゃあ、うーん……」

言葉に詰まって唸る、他に思いつく子供の可能性が無かった。まさかアテナの年齢で自分の子供はないだろう、などと思ったりして少し本人には悟られたくないことも考えてしまうコレーだった。
アテナは知ってか知らずか、視線を合わせないまま軽く目を伏せて話し始めた。

「私の祖父が土地の領主で、領民の子がよく遊びにくるんだ」
「領主さまのお孫さんなんですね」
「んー…領主だけど祖父は爵位を持ってないから普通だよ、だから私も貴族じゃない」

言い切るアテナにコクリと一つ頷くコレー。
会場での言葉を思い返す限り、貴族という物を快く思ってないんだろうと貴族についての話題には触れないことにした。

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