生き残れ!主従ゲーム
「ええと……ごめんなさい、お名前を伺っても良いですか?」
「……申し遅れました、私はハウリット・クレイベンです」
「コレット・テュリムです。コレーと呼んでください」
優しげに笑うコレーを見つめて、先程までほとんど無表情と変わらなかったハウリットが僅かながらには微笑みを浮かべる。
表情の変化に驚いたらしいコレーは目を大きく開いてハウリットを見つめる、気づいているのかは分からないがハウリットは同じ体勢のまま頭を下げた。
「では…コレー様、お急ぎ下さい。正規の地図に書かれている行き先を見ましたが、着くまでにかなり距離があります」
「えっ! そうなんですか?」
「はい、急げば余裕はあると思いますが…女性の足ではそれも辛いでしょう」
ハウリットの言葉に頷いてからお礼を言い立ち去ろうとしたコレーだが、踵を返すのをやめてハウリットを見つめる。
不思議そうにするハウリットの顔を見て、コレーは少し迷ってはいたものの口を開いた。
「あの、良ければわたしたちといきませんか…?」
「……お気持ちだけで十分です。大人数だと動きづらくなります。女性二人は不安かも知れませんが、お気をつけ下さい」
「わ、わかりました。じゃあ、ハウリットお兄さん。また舞台で!」
コレーはハウリットに軽く手を振ると、アテナの元へと走っていく。コレーにまたと言われてから固まって動けないままだったハウリットは静かに立ち上がる。
アテナにハウリットから貰った地図を見せたコレーは簡単に事情を説明する。頷いたアテナは地図を片手にハウリットの方を一瞥したコレーの手を引き、二人揃って会場を後にする。
ハウリットはそんな二人が出ていくのを見届けてから、すっかり人気のなくなった会場の中で一人溜め息をついた。
困ったような複雑そうな顔をして少し悩んでいる様子だが、自らも地図を探さねばならないことを思い出して側の青い椅子を調べた。
地図は恐らく残っているはずだがどうにも先程のコレーの言葉が耳から離れて集中出来そうにないらしい。
ハウリットは髪を掻き上げて、苦笑混じりに思わず呟いた。
「私は、お兄さん…というような歳でもないのですが……」