生き残れ!主従ゲーム
「確かに、結構遠いかもしれないな…」
「でも…アテナお姉さんは帰りたいんですよね…」
「まあ、な。でも大丈夫だ。コレーを送り届けてからでも遅くないさ」
「ほんとーに、ありがとうございますっ」
地図を一度ポケットにしまい込んだアテナは、何度も何度も頭を下げるコレーを見て思わず笑みを浮かべる。健気なコレーがどうにもかわいく思えて仕方がない、彼女は身内でもなければ今日初めて会ったばかりの赤の他人。それをすんなり心の中で消化して、コレーと仲良くなっていたのだ。
「あぁ、そうだ。私にお姉さんなんて付けなくていいよ、普通でオーケー」
「え?…ええと、じゃあ…アテナさん!」
「…ま、それの方がいいね。さ、急ごう」
「はい!」
まだ明るいうちにどれだけ進めるかは分からないのだが、アテナはコレーの手を引き走った。
コレーは走っている勢いのままベレー帽が落ちぬよう、時々片手で頭を押さえている。アテナは必死な表情のコレーをチラリと見て、また走る。
目に入る風景は寂れた田舎そのもの、集まらせてから移動させる意味が分からなかったアテナだが余計なことは後回しにしようと首を振る。
そろそろ休憩をしようか、というくらいまで走っているとすぐ先に林が見えてきた。どうやら道はこちらで正しかったらしく、林を進む参加者たちの姿がちらほらと見えた。
「こちらで合っているみたいだな、地図を持っている奴らが見える」
「はぁっ……何だか、人が少ない…ような…?」
「多分、私たちが遅かったのと正しくない地図のまま行った人間がいたんだろうな。着く頃には半分もいない気がする……さて、休憩がてら少しゆっくり行こうか」
「…は、はい…ありがとうございます」
アテナが気を使ったことが分かったのか息を切らせながらも軽く微笑み、歩き出す。日は段々と傾いてきたので林の中は薄暗くひんやりとしている。まだ季節が冬でなかったことは幸いだろう、暗くなってからの森林は一気に冷え込むのだから。
コレーは薄暗い林の遠くで聞こえる生き物の鳴き声や草葉のざわつく音に肩を震わせている、こういう場所は慣れていないんだなと分かったアテナは、コレーを抱き上げた。