僕じゃない
僕はフラフラとまた歩き出した。
が、どこか聞き覚えのある声ですぐに足がピタリと止まった。

嫌な予感が僕の背筋を凍らせる。
僕は左側を見れない。


「先程都営地下鉄●●線のホームに男性が突き落とされる事件が発生しました。
男性は既に死亡し、また男性を突き落とした犯人の男は現在も逃走中です。
駅の防犯カメラが犯人の顔を捕らえています。」


そのテレビの映像には


酷く青ざめた、先程のあの女性の手を払う僕の顔がハッキリ映っていた。


そのままパッと画面が変わると、臨時ニュースを読むアナウンサーの顔が映る。

「なお警察は犯人の行方を追っています。」


そう、僕が言った。


僕が、僕がテレビの中でニュースを読んでいたのだ。アナウンサーの顔はまぎれもなく、僕だった。
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