僕じゃない
僕は今目の前にある信じられない状況に首を左右に振るが、次に被害者の男性の持っていたという身分証明書の写真も映り、それは信じるを得なくなる。
先程ホームの中で虫の息だった僕が写真の枠の中で真剣な顔をしている。


テレビには僕が三人映っていた。
アナウンサーも、犯人も、被害者も。


そうして、テレビの目の前の僕がいる。


腰がぬけ、すぐ自分の目に映る状況が理解できなかった。
何が起こっているのかも、何がそうさせているのかもわからなかった。

テレビの前で呆然と座り込んでいる僕の後ろに人が集まってくる。
また、嫌というほど、聞いたことのある声がザワザワと木霊する。

後ろを振り返らなくても、それが誰だかは、誰よりも明白だった。
< 6 / 9 >

この作品をシェア

pagetop