僕じゃない
僕は半分引きずられながら車に乗せられた。
車内で僕は、車を運転するのも僕で、僕の両腕を抑えるのも僕で、捕らえられているのも僕という状況で、今本当の自分は一体どれなのかをぼぅっと考えていた。
そして刑務所の中にも僕しかいないのだろうかと恐ろしい考えに辿り着いたとき、僕は迷わず自ら舌を噛んでいた。
ブチンという音と共に息苦しさが襲ってきて僕は上を向いたまま両目が左右に動くのを感じた。
叫ぶ声がする。
それがどうも僕ではない。
僕ではない人間をどうしても、最後にどうしても見たかった僕は薄れ行く意識の中で必死に声のする方を見た。
僕の右腕を掴んで強く揺す振るのは僕ではなくて少し髭の生えた結構歳のいっているどこにでもいそうな中年男性。
僕の左腕を掴んでいたと思われる僕を驚いたような眼で見ているのはまだ若そうななかなか綺麗な顔をしている。
運転しているのは酷く顔色を変えた短髪の男性である。
唖然とした僕は最後に真っ白になった世界を見た。
上から手を伸ばしてくるのは嬉しそうに微笑んだ女性で、あの防犯カメラに映っていた手を差し出した人に少し似ているなと思った。
そこで僕の視界は完璧に真っ暗になった。
車内で僕は、車を運転するのも僕で、僕の両腕を抑えるのも僕で、捕らえられているのも僕という状況で、今本当の自分は一体どれなのかをぼぅっと考えていた。
そして刑務所の中にも僕しかいないのだろうかと恐ろしい考えに辿り着いたとき、僕は迷わず自ら舌を噛んでいた。
ブチンという音と共に息苦しさが襲ってきて僕は上を向いたまま両目が左右に動くのを感じた。
叫ぶ声がする。
それがどうも僕ではない。
僕ではない人間をどうしても、最後にどうしても見たかった僕は薄れ行く意識の中で必死に声のする方を見た。
僕の右腕を掴んで強く揺す振るのは僕ではなくて少し髭の生えた結構歳のいっているどこにでもいそうな中年男性。
僕の左腕を掴んでいたと思われる僕を驚いたような眼で見ているのはまだ若そうななかなか綺麗な顔をしている。
運転しているのは酷く顔色を変えた短髪の男性である。
唖然とした僕は最後に真っ白になった世界を見た。
上から手を伸ばしてくるのは嬉しそうに微笑んだ女性で、あの防犯カメラに映っていた手を差し出した人に少し似ているなと思った。
そこで僕の視界は完璧に真っ暗になった。