マカロンの音色[side:she]
* * *
うちから割と近い高校に入学した私は、もう2ヶ月経つというのにクラスに未だ馴染めずにいた。
中学からの友達はいたけど、この性格だから新しい友達はなかなかできない。
…今日もあんまりうまくいかなかったなぁ。
どうしたらこの性格直るんだろう。
そんなことを考えながら、下駄箱の前で忘れ物を取りに行った友達を待っていた。
「暗い顔してるけど、何かあったの?」
…え
声の方を振り返ると、そこには見知らぬ男子が立っていた。
つんつんと跳ねた短くてちょっと薄めの茶髪に、かかとを潰した上履き。
多分、私の苦手なタイプ。
「なぁ、何かあったの?」
再び問いかけられ、はっと我に帰る。
「あ、別に、その…」
見ず知らずの人になんと答えればいいのか戸惑っていると、何処からか甘い香りがした。
「あ。そだ」
と、彼はいきなり自分のスクールバックの中を探って、細長い箱を出し、その蓋を開けた。
そこ箱からさっきの甘い香りがするのに気付く。
「何か知らないけど、落ち込んだ時は甘いもの食べるのが一番!」
女の子みたいな論理だなぁ、と思いながらも、私に差し出された箱を覗く。
と、中にはピンク・黄色・白の可愛くて丸いものがコロンと3つ入ってた。
「えと、これは…?」
「知らない?
マカロンっていう、フランスのお菓子だよ。
あまりもので悪いけど、良かったら食べて。」
甘いものは得意じゃないんだけど…
そう思いながらも、初めて見るものに興味を惹かれて、白いやつに手を伸ばす。
まじまじと見つめてから1口かじると、ふわっとしてて、でもしっとりとしたバニラの甘味が広がった。
……!!
甘いものは苦手だったけど、これはすごく美味しい…!
「すごい美味しいね…!
あ、ありがとう!」
私は思わず彼に向かって声を出していた。
彼は一瞬だけ驚いて、照れたのか少し頬を赤くして弾けるように笑った。