あなたの隣は…(短編集)
赤は嫌い。
  大嫌い。

それをママは知ってか知らずか、あたしの10歳の誕生日に真っ赤な宝石が付いた指輪をくれた。

「あなたの赤よ。」
ママはあたしにそう言い残して、また男の赤い車に乗り込み、あたしをおいて出かけて行った。

あたしは下唇を噛み締めてそれを見送り、黙って手の中にある指輪を見た。
憎らしい程赤い宝石は綺麗に輝いている。何て言う名前なのか分からない。

パパが居なくなってから、初めてママがくれたあたしへのプレゼント。

何で赤なの…?
何でママは赤が好きなの?
何で白じゃないの…
何で黒じゃないの…
何で青じゃないの…

どうして、どうして'赤'なの…


あたしは、ゆっくりと指輪を右手の指先で爆弾に触る思いで摘まみ、持ち上げる。
月光に輝く赤い宝石は、ママの様にあたしを痛めつけた。
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