あなたの隣は…(短編集)
でも…でもね、ママ…

真っ白に包まれたあなたは、とても悲しそうで、辛そうで、見ていられなかった…。
あなたらしくなかったの。
あなたが1番綺麗に輝く色は、やっぱり'赤'なのよ。

あたしはママの冷たい手に、真っ赤な折り紙で作った指輪をはめた。
それだけで、あなたは嬉しそうに、幸せそうに表情を柔らかくするの…
実際には顔が動いてないのだってわかってる。

ママがあたしに「ありがとう」と言わない事も「大好き」と言わない事も「愛してる」と言わない事も、わかってる。


でも、あなたには感謝してるの…

写真に写る、真っ赤な顔して産まれた赤ちゃんを抱いて、パパと幸せそうに微笑み合っている、ママの顔を見てまた涙が溢れたの。

「ありがとう」と「大好き」と「愛してる」と、言わなかったのはママだけじゃない。

あたしも、ママに言わなかったのよ…

ママが居なくなってから、ママにもう言えなくなってしまってから気づくなんて… ママに似て、ダメね、あたし…
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