あなたの隣は…(短編集)
その後、長ったらしい医者の説明があったが、その時の私の頭では理解できなかった。

今まで相当無茶をしていたらしく、すぐに入院・手術が必要で「手続きをしてください」と言われた。

私は悪夢から覚めた時の様にハッとして、慌てて首を左右に振った。

医者と看護師は物凄く驚いていて、私を見開いた目で見てきた。

「今はっ…今は、ダメなんです。もう少しで、ドームのコンサートもあるし今はもっと練習して、宣伝しなきゃいけないんです!!だから…」
「あなたは、ご自分の命と仕事、どちらが大切なんですか?」

医者は冷静に、かつ少し怒ったような声で私に聞いた。
傍にいた看護師は、手に持っていた書類を強く抱きしめるようにして抱えていた。

その場だけ、時間が止まってしまったかのように、みんな動かない。
ガヤガヤとしていた病院内だったけれど、今はもう何も私の耳には入って来なかった。

手が震える。
喉が焼けるように熱い。痛い。

それでも…
私の答えは決まっていた。
< 4 / 100 >

この作品をシェア

pagetop