あなたの隣は…(短編集)
春斗君のお蔭で、あたしは静に気持ちを伝える勇気を持てた。
あたしは春斗君と別れ、教室まで走った。
自分の鞄を持って、急いで自分の家の真向かいの隣の家…静の家に行く為に。
あたしは勢いよく教室の扉を開けた。
「あ、優ちゃん。お帰り♪」
ビックリして、動きが止まった。
静が、あたしの席に座っていて笑って手を振っているから。
「な…静、帰ってなかったのか。」
あたしは速くなりすぎた心拍数を、どうにか通常に戻そうとしているのを、静にバレないように平静を装った。
静は立ち上がり、こちらに近づいて来た。
「優ちゃん、僕、話してなかった事があるんだ。」
「……何?」
「僕…優ちゃんが…優貴が好きだ。」
無意識に流れる涙と、混乱する脳内。
え?なんて言った?
嘘だろう?
まさか…そんな…え?
え?え?と戸惑うあたしを、静は抱き締めた。
普段ナヨナヨしている静の腕は、意外にしっかりしていて力強くて、安心した。
ギュッと強く抱きしめられると、静の香りがして、更に安心した。
こんな状況なのに、あたしの心拍数はだんだんと落ち着いて、あたしは安心しきっていた。
「優ちゃん、冗談じゃないから。僕、小学生の時から優ちゃんが好きだった。今まで勇気が無くて言えなかったけど、他の奴に告られてる優ちゃん見たら、急に焦ってきてさ。」