あなたの隣は…(短編集)
耳元で、囁かれるように言われ、その声は微かに掠れていた。
「良かった。」
「え?」
自然と口から言葉が出た。
「彼氏みたいな彼女だけど、よろしくな!」
「っ…」
身体を離して静に笑顔を向けると、静は顔を赤くして背けた。
「さて、帰るか、静?」
あたしが左手に鞄を持ち、右手を静に差し出すと、静は渋々左手であたしの右手を掴んだ。
「はぁ…」
「何?」
「優ちゃんのマイペースは変わらないか…。」
「…そんな事ねぇよ。」
「へ?」
不満そうな静の頬に軽く唇を当てた。
それだけで真っ赤になった静は、正直可愛く思った。
マイペースじゃない。
これからは、静ペースになると思うよ。
可愛い男・静は、あたしの最愛の彼女みたいな、あたしの最愛の彼氏である。