あなたの隣は…(短編集)
「突然でビックリしたよね!ごめんね!いや、余りにも綺麗な栗色のフワフワした髪の毛だからさ!どうやって染めたら、俺みたいにキシキシにならないんだろうって…」
慌てる先輩とは違い、私は落ち着いていて、自分の髪の毛を改めてよく見た。
充分、痛んでると思うのだが…
「んー…女の子と男では髪質が違うのかなぁ?」
ジーッと見てくる先輩に、半分呆れてしまった。
「多分、先輩はサッカーやってる分、髪の毛が日焼けしてるんですよ。私は、絵とか本ばっかりですから。」
私はキシキシだと言う先輩の髪に、試しに触ってみることにした。
耳元辺りにある髪を指先で触った。その瞬間、先輩の体はビクッとなって、くすぐったかったのかな?と思って顔をみようとしたら、勢いよく反らされた。
……なんだ、やっぱ遊びだったか。
嫌いなら嫌いって言えば良いのに。
先輩の頭は私の手から離れていて、行き場の無くなった手は、空気を触っていた。
「俺!用事思い出しちゃった!送ろうと思ってたんだけど、ごめんね。気をつけて帰ってね?バイバイ!!」
それだけ大声で言った先輩は、足早に屋上を出て行った。
先輩の髪の毛のサラサラした感触が、手に残っていた。