あなたの隣は…(短編集)


「でね、彼氏の前で恵ちゃんに電話しなきゃって言ったらね、彼氏、恵ちゃんのこと男だと思ったみたいでいきなり怒りだしたの!」

目の前でお弁当の玉子焼きを美味しそうに食べながら、キョンは言った。

キョンこと蜜家 希羽乃(ミツヤ キウノ)は、小学校からの親友だ。


昨日の彼氏と行った、付き合い始めて3ヶ月記念のデートの話は、朝のちょっとした時間から授業の合間の休み時間、昼休みまでを使って話された。


「ね、恵ちゃん、こんなに可愛いのに!」
「…嫌味かこのミス貴京(キキョウ)が。」


軽く睨むと、キョンは可愛らしく舌をペロッと出して誤魔化した。

今年の秋、文化祭で決まったこの貴京学園の一番綺麗で可愛い人。それがキョンだ。
それがきっかけで今のラブラブな彼氏と出会えたのだから、キョンにとっては幸せそのものだろう。



放課後、私は昨日、顧問が出張だという理由で休みになっていた部活に行くことにした。

私が所属しているのは美術部。
自由参加である美術部は、半数が所属しているかも不明な人達で、毎日真面目に活動しているのは、私を含めた5人くらいだ。

私は、今描きかけの風景画がある為、美術室に向かった。


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