あなたの隣は…(短編集)
「お疲れっス。」
部長と副顧問に一言入れ荷物を置き、制服を脱ぎ絵の具だらけになったエプロンを着けた。
立ったまま筆を掴み、絵の具を適当にパレットに出して、心を落ち着けてから描き始めた。
どれぐらい描いていたのだろうか…
ふと室内を見渡すと、何人かいた生徒も帰ったらしく、部長と副顧問しか作業をしていなかった。
「その絵って、どこの絵?」
真後ろから聞き覚えのある声がし、急いで振り返ると、やはり私の思ったとおりの人が椅子に深く座っていた。
「何しに来たんすか?先輩。」
夕日が差し込むこの最上階のこの美術室の中、完成間近の私の絵には真っ青な空も描かれていたから、オレンジの光りが変に感じた。
「ん?そりゃ、一緒に帰ろうと思ってさ!」
オレンジ色の先輩は、優しい笑顔をしていた。
嫌いなのに…
遊んだだけなんでしょ?
私はもうわかってるから、そんな嘘、つかなくていいのに…
私はその言葉に、何も言わず、エプロンを外した。
「え?」
「帰ります。」
「えっ…でも、まだ絵…」
「明日の朝にすればいいし、放課後もあるし。」
私は言いながら制服とコートを着て、マフラーと手袋をした。