あなたの隣は…(短編集)
そのまま副顧問の許へ行き、「お疲れっした」と言って美術室を出た。
少し遅れて美術室から出てきた先輩は、先に廊下を歩いていた私の隣まで小走りで来た。
「ね、あの風景画、どこの?」
「…わからないっス。夢に出てきた映像を、そのまま描いてただけなんで。」
「…綺麗だった。凄く。」
「どうも。」
校門を出て、道を歩いている途中、ふと思った。
先輩の家は、こっちなのだろうか…と。
でも言わないでおく。
だって、騙そうとした人のことまで気を使う必要はないと思うし。
「今日、いつもより、元気ないね。どした?なんかあった?」
私の顔を覗き込みながら、先輩はそう言った。
私は少し驚いたが、構わず歩いた。
「別に。何も。」
「…俺に出来ることなら言ってな?」
悲しそうな、心配しているような顔をしている先輩を見て、息が詰まった。
こんな顔も、演技なのか…と思うともうどうにでもなれと自棄になった。