あなたの隣は…(短編集)
女の子は満足したように頷いて、その場から去って行った。
最後まで俺に気づく事なく。

女の子の姿が見えなくなった時、俺はさっきまで女の子がいた場所に座り、町を見下ろした。

さっきの絵に描かれていたような、暖かさを感じた。


それから3年後。
俺は受験生で、受験勉強が嫌になってこっそりと家を脱け出した。
町をブラブラ歩いていたら中学生の美術コンクールがあって、中学生の作品が展示されているホールみたいな所があり、俺は無意識に足を踏み入れていた。

大賞とかかれた金色の紙の下、俺はその絵に釘付けになった。

幻想的な雪景色の水彩画。
どことなく早朝を思わせるその絵の景色は、丘の上からの景色では無いことはすぐにわかったけど、なんだかあの時と同じような暖かさを感じて、その場から離れられなくなった。


ふと名前を見ると、近藤 恵と書かれていて、俺はその時、コンドウ メグミと読んだんだ。


ずっと忘れないでいようと思って、何度も見ては頭の中で繰り返した。


高校2年の春、噂が流れた。
難関校と言われるこの高校を、美術の才能だけで入学してきた女の子がいる…
と。

俺は真っ先にあの女の子か、コンドウ メグミちゃんだと思った。

けれど友達はその子の名前をケイと言った。
俺は何を期待しているんだと、自分を鼻で笑った。

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