僕はショパンに恋をした
「ここかな。」

地図を片手に、朝比奈さんは言った。

車を家の前に止めて、降りる。

住宅地の中にあって、とてもレトロな洋館だった。

古いが、とても手入れされているのがわかる。

庭には、いろんな花が咲いているが、中でも薔薇が素晴らしかった。

朝比奈さんがインターホンを押す。

表札には『藤堂』とかいてあった。

ほどなくして、彼女は出て来た。

「お待ちしてましたよ。」

そう言って、ゆっくりと歩いて来た彼女は、笑った。

白髪の品の良い女性だった。

もっと若い女性かと思っていた。

「こちらが、ピアノを見たいという方かしら?」

朝比奈さんは、俺達を紹介しようとして、あ、と言った。

「名前、まだ聞いてなかったね。」

あっはっはと笑った。

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