僕はショパンに恋をした
『最初で最後の公演 日本公演で引退』

(どういう…ことなんだ…?)

もう何が何だかわからない。

さっき、シオンは、自分は霧野さんをおじいちゃんだと言った。

ジーン・ウェスティンをおばあちゃんだとも言った。

霧野さんは、自分とジーンさんの間に子供が出来ていたことは、知っていたのだろうか。

考えても考えがまとまらない。

処置室に入ったシオンが気になって、頭がまわらない

頭をぐしゃっと掻いて、俺はシオンを思った。

大丈夫だろうか。

とてもつらそうだった。

俺はあたふたとするばかりで、名前を呼ぶことしか出来なかった。

人間というのは、無力なものだな。

俺はたまらなく自分が弱い人間に思えて、そしてシオンの倒れた姿を思い出して、体が震えた。

今になって、震えた。

俺は自分の腕で、自分の体を抱き締めるようにうなだれた。
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