僕はショパンに恋をした
どれくらいたっただろう。

処置室のドアがあいた。

看護婦さんが俺に言った。

「もう大丈夫ですよ。今は眠ってますけれど。」

そういって、病室に移動した。

運ばれていくシオンの寝顔は、いつもと同じで、ほっとした。

途中、医師から家族の連絡先を聞かれたが、答えられなくて歯がみする。

しばらくしたら起きるだろうと聞いて、俺は病室のシオンが眠るベットの脇で、じっと座った。

顔色も良い。

何だったのだろうか。

貧血…?なのだろうか。

俺はシオンを見ながら、ちょっと前のシオンの演奏を思い出す。

優しい音色を思い出す。

思わずその旋律を口ずさむ。

それだけで、優しい風が吹き抜ける気がした。

そして、かすかに、そう、かすかに自分の求めているものが、胸の奥の方に見えた気がした。

はっきりとはまだ形に表せないが、それでも明確な願望だけが浮き上がっている。

そんな感じだった。
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