僕はショパンに恋をした
そして、一時間近くの休息のあと、シオンはまた舞台に戻っていった。

初リサイタルを見終えた観客たちは、シオンの姿を
見て称賛の拍手を送った。

嬉しそうに笑い、観客に手を振ると、4曲目を弾く為にイスに座る。

ショパンのスケルツォ 第2番 変ロ短調

シオンが藤堂さんの家で弾いた曲だった。

俺は正直、この曲が不安だった。

また倒れたりしないか…?

俺の心配をよそに、曲は穏やかに進む。

シオンは言っていた。

この曲は、おばあちゃんが大好きな曲だったと。

そしておじいちゃんの得意な曲で、おばあちゃんが初めておじいちゃんに弾いて聴かせた曲だということ。

霧野さんとジーンの思い出の曲。

シオンは大切に大事に弾いた。

この前みたいに、息があがって、呼吸が乱れる事はなかった。
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