僕はショパンに恋をした
拍手がなりやまなかった。

何かを誰かを思ってた弾くというのは、こんなにも心を揺さぶるものなのか。

シオンは一曲ごとに、観客を見て、微笑み、深く頭を下げた。

リサイタルの予定演目は、5曲だった。

アンコールをいれて6曲。

最近では、アンコールの曲目まで、パンフレットに載せたりしている。

シオンはお楽しみが良いと、アンコールの曲目は載せなかった。

そして5曲目が始まった。

別れの曲。

まるで、シオン自信のような曲だ。

これでお別れだ、とささやく様に弾く。

胸の奥がずきりと痛む。

シオン、君は今何を思っている?

ただそれだけが、知りたくて、必死でシオンの旋律に耳を傾けた。

たった5曲のリサイタルは、まるで夢の様に、幻のように、ふわりと現れて、あっという間に消えた。

そして残ったのは、なりやまない拍手の洪水だけだった。

< 168 / 185 >

この作品をシェア

pagetop