僕はショパンに恋をした
シオンは立ち尽くした。

自分の音楽が、多くの人に伝わる喜び。

そして愛する人たちへ、自分の音楽を捧げられる幸せ。

それらすべてを、その小さな体に受け止めて、立ち尽くしている。

何度も頭を下げ、舞台袖に下がっては、大きななりやまない拍手に引き戻される様に、舞台に戻る。

そんな幸福なやりとりを、何度か行ったあと、シオンがこちらを見て頷いた。

大丈夫か?と目で問うと、大丈夫だと目で答えた。

俺は意を決して、舞台裏へ合図した。

また客席のライトが暗くなる。

舞台のライトも暗くなった。

一瞬会場が静まる。

そして、ここからが本当に、シオンの楽しい音楽の時間が始まるのだ。
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