僕はショパンに恋をした
シオンと俺は、イスに静かに座った。

シオンはオーケストラの曲を一曲ひくことは、無理だと言った。

だから俺は考えた。

無理な分は、俺が引き受けると。

一か月一緒に練習すれば、弾き方や癖もある程度は分かる。

シオンと交替で弾けば良いのではないかと。

体力を考えて、適度なところで弾き手をかえる。

それなら何とか最後まで一曲弾けるだろう。

はっきりいって無茶苦茶だ。

前代未聞にもほどがある。

でもこれしか思い付かなかった。

シオンに少しでもオーケストラと演奏させてやるには、これしか俺には出来なかった。

シオンはこの案にとても喜んだ。

俺はそれだけで、充分だった。

(魔法使いの弟子は、魔法使いの手助けをするだけさ。さあ、魔法使い君、好きなように楽しんでくれ!)

俺の声が聞こえたかの様に、シオンは指先から、虹の様な旋律を奏で始めたのだった。


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