僕はショパンに恋をした
シオンの瞳がゆらぐ。

俺はまた頷いた。

任せろ。

そういうかの様に。

そして鍵盤に手を置き、そっとシオンの音に重ねる様に弾き始める。

次第に音が完全に重なると、シオンは静かに弾くのをやめる。

俺は、霧野さんやシオンの事を考えながら弾いた。

何かを、誰かを思って弾くのは、こんなにも幸せな気分なものなのだろうか。

願わくば、この気持ちが聴く人にも伝われば良い。

そして、俺が霧野さんから受け取った様に、奇跡の種を見つけらるれたら良いと思う。

あの優しい気持ちを。

霧野さん、俺はようやく見つけたみたいだ。

随分かかったのかな。

それとも、早く見つけられた方なのかな。

どちらにせよ、今ここにシオンがいることに感謝したい。

彼に出会わなかったら、俺はここにはいないのだから。

そう思いながら弾いていると、シオンの優しい旋律が俺の音に重なった。

もう大丈夫と、目元が笑っていた。

完全に音が重なったところで、俺は弾くのをやめた。
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