僕はショパンに恋をした
第2章

虚像

「相変わらずじめじめしてんな…。」

俺は、少し伸びすぎた前髪をかきあげながら、両目をすがめた。

空港から足を踏み出した途端、日本独特の湿った水の匂いがする。

久しぶりに戻ってきた日本。

先ほどからちらちらと見る視線を、さらりと流して、足早に歩く。

空はどんより。

見上げて溜め息をつく。

「成長しねぇなぁ…、俺も…。」
< 34 / 185 >

この作品をシェア

pagetop