僕はショパンに恋をした

日本に着いて、俺は自宅に戻るより先に、『cafe ♪』に向かうことにする。

その間に何度か、声を掛けられた。

こちらでも多少名前は知られているらしい。

苦笑いしかでてこない。

駅の構内の本屋で買った、音楽雑誌を読みながら、電車に揺られた。

若手の音楽家がどんどん出ているようだ。

海外からもリサイタル目的で、何人も雑誌に取り上げられている。

どいつもこいつも同じなんだろうけど。

少しやさぐれた気分で、溜め息をつく。

雨が今にも降りそうな、薄暗い空模様。

見上げて、嫌な気持ちになる。

「俺みてぇだな…。」

ぼそっと呟いて、懐かしい駅に下り立つ。

あの坂をあがれば、店だ。

あの夏のままの風景。

少し足早に、懐かしい風景にたどりつく。

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