僕はショパンに恋をした
後ろから聞こえる、小さな足音を気にしながら、おかしな事になったと溜め息を付く。

解体業者は、江ノ島に近い所だった。

ほどなく、見つかった。

敷地内には、小さなプレハブの事務所があった。

まずは聞いてみよう。

そう思い、足を踏み出したところで、気付いて振り返る。

「あ、俺の名前、ひさぎ。ほおずみ ひさぎ。」

「うん。」

彼はまた笑った。

何ていうか…、つかみどころがない奴。

もともと俺は、人付き合いが得意じゃないんだ。

なのに、なんでこういう状況なんだ?

また釈然としないでいると、不意打ちのように聞いてきた。

「入らないの?」

「今、入るよ。」

少しムッとしながらも、事務所のドアをそっと開けた。
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