僕はショパンに恋をした
少し脱力しながら、腕時計を見る。

四ノ宮さんから教えてもらったピアノ屋は、横浜にある。

今から行くよりは、明日行った方が良さそうだ。

「ま、あとは明日だな。」

明日ピアノ屋に行って、見せてもらうことにしよう。

いつの間にか、どんよりとしていた空は、少しだけ晴れて、夕焼けを映し始めていた。

「じゃあ、今からお墓に行こう。」

横から顔を覗きこみながら、シオンが言った。

「…は?」

シオンは、良いこと思い付いたとばかりに、俺を見る。

「おまえ何言ってんの?」

「だから、『シオン』だってば!」

あははと笑って、また言った。

……。

かみ合わない。

絶対かみ合ってない。

「近いって言ってたよ、四ノ宮さん。」

そういうことじゃなく…って、こいつに説明しても、多分かみ合わない。

もう、いいや、と半ばあきらめた気持ちで言った。

「では行きましょうか、シオン君。」

もう気分は、どこぞの王子様のじいやだ…。
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