僕はショパンに恋をした
またもやシオンの前で、涙してしまった。

けれど、シオンは気にする風でもなく、ごくごく自然に笑っている。

「シオンは、何で一緒に墓参りしてんの?」

聞くと、こちらを振り返り、フワリと笑う。

「さて、どうしてでしょう?」

またそれだ。

肝心なところは、はぐらかされている気がする。

まあ、別に追求するつもりはないけど。

特に他人に興味などもたない性格の俺は、そんなこんなで友達と呼べる奴がいない。

今もシオンとの距離を、さりげなくはかろうと画策している。

なのにシオンは、まるで風みたいに、さらりと吹き抜けて行く。

その風に誘われるように、空を見上げると、西に星が見えた。

「そろそろ帰るぜ。」

俺はそう言って、来た道を戻ろうと歩き始めた。

シオンは、そうだねと呟いて、俺の後ろを歩いて来た。

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