僕はショパンに恋をした
朝、目覚めて、一瞬今の状況を思い出す。

(あぁ、そうか…。昨日、日本に戻ってきたんだっけ…。)

帰国わずか一日で、めまぐるしい現実を目の当たりにして、思考が霧散する。

そして回らぬ頭で、思い出す。

夢を見たんだ。

内容はまるで覚えていない。

でも体を包む、切なくて優しい感じが、まだ残っている。

(なんだっけ…?思い出せないなぁ。)

とりあえず、シャワーを浴びて、身支度をととのえ、ロビーに向かった。

朝飯は、ピアノ屋に行く途中で何か食べよう。

そう思い、ロビーを見渡す。

ロビーラウンジのカフェに、シオンを見つける。

コーヒーでも飲んでるのか、少し大きめのレザーソファーに浅く座っている。

視線は、大きなガラスの向こうの空に向けられている。

今日は、青空が見える。

良かった、晴れて。

雨が嫌いな俺は、少し安堵する。

シオンの向かいに座ろうと、近付いた俺は、息を飲む。

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