僕はショパンに恋をした
女将は少し驚き、シオンに微笑んだ。

「おうとりますよ。えらい日本語達者どすなぁ。」

二人の間には、にこにことした笑顔が行き交う。

俺はもう、ただ見てるしかなかった。

会話をひとしきり楽しんだ後、離れの部屋に着く。

「すぐにお食事用意しますね。」

そういうと、さり気なくお茶を入れて、女将は部屋を後にした。

荷物を置いて、品の良い座椅子に座る。

少しあいた、障子からは、庭の緑が闇に紛れようとしていた。

もうすぐ日が暮れるな。

そう思ったところで、シオンが口を開いた。

「さっき、友達じゃないって、言おうとしたでしょ。」

「え…?」

真正面から見据えられて、たじろぐ。

「いや、…だって、友達じゃねえだろ…?」

シオンは眉間にしわを寄せた。

あれ?怒ってる?

「友達じゃないなら、僕、何?」

反対に問われて、返事に困る。
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