僕はショパンに恋をした
シオンの優しい空気は、きっと、おばあさんから譲り受けたものなのだろう。

「良い…おばあさんだな。」

シオンは嬉しそうに頷いた。

「うん。とても素敵な人。大好きなんだ。」

これも俺にはない感情。

俺には、大好きだと言える親族もいない。

「二か月前に、亡くなったんだ。」

はっとして、シオンを見る。

悲しい顔をするわけでもなく、ただ穏やかに笑っている。

こういう時の、気の効いたセリフさえ知らない俺。

それでもシオンは俺を友達と呼べるのか?

「大丈夫。おばあちゃん、僕のここにいるから。大丈夫。」

胸に手をあてて、まるで何かに祈るみたいな姿に、俺は切なくなった。

今朝、空を見上げて空が遠いと、切なげに言ったのを思い出す。

少しだけ、シオンが見えた気がした。
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