僕はショパンに恋をした
俺達は電車を乗り継ぎ、嵐山に行った。

「あ、あれ、人力車だよね!」

指差して、嬉しそうに言うシオンの姿は、まるで修学旅行生だ。

「シオン、お前、蕨餅食ったことある?」

「ワラビモチ?」

少し考えて、あぁと思い出したようだ。

「透明の、小さい団子みたいなやつ!」

食べた事はないと言う。

「じゃあ、本当のワラビモチっていうの、食べようぜ。」

にやりと俺は笑って言った。

天龍寺のそばに、それは美味しい蕨餅を出す店がある。

小さな店だが、奥に喫茶があるのだ。

迷わず入って行くと、シオンは言った。

「何?本物って。」

「見ればわかるさ。」

席につき、蕨餅を注文する。

冷たいお茶を飲みながら、シオンを見る。

「何?」

不躾な見方だったろうか。

シオンが首をかしげた。

「いや、三日前には、こんなことになるなんて、想像も出来なかったからさ…。何か、変な感じだなぁって。」

シオンは、ふふっとわらい、だから楽しいと言った。

そして運ばれてきた蕨餅の、器の蓋をあけた。
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